阿羅漢(梵語 arhatの音写)。
訳名、応供・応真・無学など。
阿羅漢果を得た最高境地の人。
インドに十六人の大阿羅漢の記録がある。
釈迦の命を受けて、正法護持につとめたとされる人々。
また、仏滅の年に結集した五百人の大阿羅漢もいる。
それが、十六羅漢となり、五百羅漢となり、
中国を経て、日本に伝わった。
右の人物は、第九尊者のジュバカ(戍博迦)。
香酔山(コンロンザン)に住み、
九百人の弟子を持つ。
釈迦在世時の名医の名前であるとも伝わる。
羅漢は、中国に渡り、
老荘思想、禅などと混交することによって、
独特の風貌を獲得し、何事にもとらわれぬ、
天地間に自在な、個性溢れる群像となった。
日本では、主に禅宗に流布し、
十六羅漢、十八羅漢が寺の山門に配置され、
五百羅漢は、江戸期から庶民的な広がりをみせていった。
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<仏>と<人>との間をつないできた羅漢は、元来<人>の位置であり、
我々の喜怒哀楽がまっすぐに通じる相手である。
彼らもまた、なまなまとした<こころ>なるものを、そのふところに抱いている。
ただ、それは透明で、かるがるとしたものに違いない。
「らかんさんができたら、回そじゃないか」
そういう遊びがあった。
らかんさんもまた、一人でも多くのらかんが生まれたら世に回してほしいと、
そう、願っているだろう。
図版:鵜飼徹定「羅漢図讃集・戍博迦尊者」