柳絮


  柳絮
  柳(楊)の種子。
  白い綿毛に包まれて、
  風に乗って飛ぶ。


  十年ほど昔のこと。
  ちょうど、ふうらを描き始めた頃。
  傾いた春日に犀川が美しく染まっていた。
  双眼鏡の丸い視野に水面を切り取って、
  一枚の絵のような風景を楽しんでいると、
  なにやら白いものが次々と流れていく。
  驚いて双眼鏡から目を離してみると、
  広い瀞(とろ)いっぱいに柳の絮が飛び立っていた。
  その影が水面に映り、上と下と、
  風もなく音もなく、まのあたりただ静かに白いものが滑ってゆく。
  遠く広い未来への旅立ち。
  ひたむきで、ダイナミックな柳の意志。
  ふうらをどう描いていけばいいのか、
  答えはこの風景の中にあった。   

  五百羅漢野に散りゆけば柳絮飛ぶ


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