惟然
俳人。美濃国関生まれ。
風羅堂、鳥落人、梅花仏などの号。
芭蕉門下で最も異彩を放つ自由人。
鳥の羽風に梅の花散るを見て隠遁。
芭蕉に学び、行脚の伴もよくした。
師の没後、ゆかりの無名庵を守る。
木魚に似た鳴り物を風羅器と名付け、
風羅念仏を節よろしく唱えて、
蓑笠で諸国放浪。
「古池にふる池に蛙とびこむ水の音、
ナムアミダブツ、ナムアミダ」
飯を喰うも、茶を喫すも俳諧なりと、
飄々と天地に孤吟。
平明で、無季の句も多い。
千斤ノ金有ルモ林下ノ貧ニ如カズ
ひだるさに馴れてよく寝る霜夜哉
水鳥やむかうの岸へつういつい
図版:三熊花顛「近世畸人伝」