1716年摂津国生まれ。
豊かな眼差しを持つ天然の画家・俳人。
代表作「夜色楼台図」「春風馬堤曲」。
はろばろとした時間。
ひろびろとした空間。
のびやかな精神に、繊細な眼。
蕪村の世界は大きく温かい。
不明の幼少期、
苦難の青年期、
一つの暗黒星雲が次々に星を生み出し、
華麗な散光星雲に変貌する様を人間蕪村に見る。
天心の月、芦間の蟹、
頭巾を目深に被った嬰児から、
草いきれの中の死人まで、
物にも人にも限りない慈しみを尽くす。
豊穣で、瀟洒で、
すらすらと俳画や俳詩なども創造してしまう自由な精神。
陰に佇つな、と
ものを愛せ、と
この翁からはいつも叱咤される。
図版:月渓写「蕪村画像」