ふうら草紙

草筆
梧桐 虎杖 翁草  沢瀉 辛夷
  棕櫚 春蘭 白詰草  水仙
泰山木  高三郎 土筆 露草 石蕗
 ニゲラ バオバブ 芭蕉 薔薇 葉蘭  半夏生
 二人静 木蓮  侘助 吾亦紅 羽根


書き初め2013…月下美人、泰山木


筆のいろいろ


竹筆が好きで愛用していました。
利き腕ではない左手で字と線画を描くのが面白かったのです。
それがいつの間にか、毛筆になり、ふうら画になりましたが、
ときおり原点の竹筆に戻ります。
それから藁筆が好きになりました。
藁筆は良寛も愛用したとのことですし、
これらはいろんな書き手が遊んだり試したりしてきた筆です。

それとは別に、ただ筆草と呼ばれて親しまれたり、
姿形がなんとなく筆を想わせてくるものがあります。
翁草などは墨に浸したようなあともあって見事な筆ぶりです。
それを使ってみよう(遊ばせてもらおう)と思ったのは、
昔から筆草と呼ばれてこどもたちの落書道具になっていたこと、
その年庭の翁草が五十輪もの花を着けて豊作だったこと、
それからやはり、翁草もまた、ひとりのふうらであること、
ひとりのふうらは、また一株の翁草であることによります。

花に墨をつける瞬間はためらいが出ます。
花としてあるものを筆に仕立てる以上、
それと引き合うだけのものを生み出さなければ、
花も承知してくれないのではないか、と緊張します。
まずは、花に敬意を払って、
それがどのような筆具合であろうと、
いったん筆を走らせたら、互いの信頼感で進むこと。
こりゃ、あかん、は禁物です。
反故で済ませるわけにはいきません。
一枚は花と置き換わる絵を残すこと。

こういう心づもりで、ある日文房に紙を広げるのですが、
そこはふうらが全部たすけてくれます。
高級羊毛筆だろうが、
硬派の山馬筆だろうが、
野辺の土筆だろうが、
ふうら画はみなそれぞれの味であり、
そこに佇むのはみな同等のふうらたち。

翁草の次に遊ばせてもらったのは、泰山木の筆。
これは実を拾って、その立派な筆の軸姿に感心したからで、
翁草以来十年あまり経ってからのことでした。
それから初めて咲いた月下美人の名残を筆として。
それから土筆は土の筆と書くのだったと気が付いて。

みんな実用には向きません。
葦は昔からペンとして愛用されてきましたし、
筆草としては弘法麦が由緒ある歴史をもっていると知りました。
見たことはありませんが、縁があれば使ってみたい筆です。
敬愛する浦上玉堂の遺品にあったと聞いてはなおさらです。
ともあれ、個性豊かな筆草たちにありがとうです。


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