ふうら草紙


羽筆
二ヶ月に一度行く病院の前庭で羽根を拾った。調べるとどうもチョウゲンボウ*のものらしい。この辺りは案外猛禽がいて、山の上に立つ病院の屋上にハヤブサが止まっていたり、下の池にミサゴが舞い降りたりするのを目撃したことがある。

鳥の羽根は音座の方が詳しく、折々に拾った幾十枚かを大切にファイリングしてある。一応、そこに預けた。草の筆で久々に遊び始めた頃で、羽根ペンとして興味も湧いた。ヨーロッパで長く使われ、鷲ペンとも言うから鷹でもオーケーだろう。


二風羅


最初に「鳥」という字を書いてみたが、硬さと細さに驚いた。根元を削って先を割るなどという細工を無視してそのまま使う。草も木もそう。自然主義である。ふうらにはそれが一番いい。



詩人


スペインの詩人、フェデリーコ・ガルシア・ロルカの誕生日に筆下ろし。

ロルカの走らせる線に刺激を受けて紙を広げた。ペンはこの間拾ったチョウゲンボウの羽根。ロルカは美を狩り捕る鷹のような眼をしているから。
雨とロルカ。フラメンコの血の匂いは雨に消えて、オリエンタルな湿気に包まれた。(Twitter 2016.6.5)

ロルカやコクトーなど詩人の線描がぼくの絵の原点で、ふうらもたぶんその延長にある詩的風景なのだろう。



鳥


これは酉年2017年元日に書いた「鳥」。
同じく「空」。天蓋の下に雲も浮かべてみた。


空



小型のチョウゲンボウの初列風切羽では、ペンとしてはちょっと短くて持ちにくい。けれど、ペンの良し悪しではない。チョウゲンボウで描くことが大事。なんならウグイスの尾羽で描いてもいい。その縁が生まれたならそうする。

(訂正:鳥の羽根に詳しい知人から、ツツドリの初列風切羽だと教えていただきました。まさか病院の庭にツツドリとは予想もしませんでしたが、これはこれで好きな鳥。チョウゲンボウと思い込んで書いた文章はそのままにして、今後の教訓といたします。ロルカにも申し分けない。ツツドリの鳴き声は、PoesiaのPo, Po, Poだということにしておきたい。;^^;)


   *


鳥の羽根で描くのは初めて。

それまで翁草、泰山木、月下美人、土筆、蒲公英、虎杖、木蘭……と穂や実を筆先に見立ててきたが、根元の方をペンとして使ったのも初めてのこと。

その後、通路を塞いでいた石蕗と葉蘭を切って、記念に筆になってもらった。
さすがに葉の方は使えないので軸の方で描いたのが、草ペンの第一号。

その年にバオバブが枯れて、三本の木軸と化した。かれらにもペンとして生まれ変わってもらった。木ペンの第一号である。


この三つがきっかけで、茎や枝、葉柄などでも描くようになり、筆の種類がいっきに増えた。いずれも何らかの出会い、機縁のあった草木たちである。




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