ふうら草紙


草筆


二年前の夏、バオバブの種を入手して夢を播いた。十一粒のうち三つが発芽して、それぞれ双葉を開いた時に名前を付けた。
Sabar(太鼓)、Picca(鳥)、Jamm(平和)。
セネガル音楽が好きだったので、セネガル生まれのバオバブにウォルフ語で。
「Sabar」と「Jamm」はユースー・ンドゥールの曲名にもある。
バオバブ・トリオは最初の冬こそ無事に越したが、次を越せず、三度目の夏を迎えられなかった。
二年間の夢と緑に感謝して、残ったか細い幹で筆(木ペン)を作った。
八月一日がバオバブの種を初めて見た日、それを記念して墨を磨った。



翁草

翁草


まず、「樹」という字をそれぞれの筆で。
それから、おなじく葉書にバオバブ詩文。
左から、Jamm、Picca、Sabar。
漢字一字はともかく、葉書に文章となるとぎりぎりの太さ。
描き味は案外やわらかく、水含みもまあまあ。



翁草


アフリカの陽光に生まれて、日本の陰影に育つ……彼らの魂はどちらにあるのだろう。そんなことを考えていたら、セネガルでも日本でもない、ぼくらにあるのはバオバブの魂だけ、と答えが返ってきた。(Twitter 2015.12.22)



翁草


Jamm。初めて描いた二年前のバオバブとよく似ているのに後で驚いた。今もiPad miniの壁紙に使っている絵、あれは竹筆を使用、それなりに墨絵らしかったけれど、これはペン画タッチ。


翁草


Picca。セネガルのバオバブ、アダンソニア・ディギタータは枝が広がり描きにくいので、ついマダガスカルのバオバブ風になる。それをさらに半具象、抽象にまで、と頭ではイメージしつつ手が(腕が)追いつかない。


翁草


Sabar。だんだん大胆に、融通もきかせてくるので、あとからの方が面白くなる。それぞれの軸の長さ、枝の付き方に個性はあるものの、書き味にそれほどの差異はない。バオバブはもっともっと描き込んでみたい。



二風羅


最後はやはりふうら画を一枚。

バオバブ筆もやはり木ペンなので、多彩な表現は出来ない。ただ、アフリカの乾燥地帯の木だけあって、水含みは相当いい。ペン先の当たりも柔らかい。この点は他の木筆(木ペン)を寄せ付けないのではないか。根に大量の水分を蓄え、幹や枝や葉も水気があるバオバブならでは。 バオバブ・トリオに改めて感謝を。




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