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ドド5
羅漢寺に行く。
謎が立っている。
不明が
不詳が
不思議が
ずらりと立っている。
昔はもっと
てんでにいたそうで、
やっぱり
謎が整列していては
ちょっと寂しい。
ここは
不遇も
不運も
立っている。
石のディック
石のドド
石のユタ
そう思ってもいい
繊細な魂が
簡素な線刻で
見事に造形されている。
椿の陰で
メジロが鳴く。
ピアニッシモで
トレモロで。
ある日は
大粒で美声のイカル。
ドドもゆっくり
ピアノに向かい
羅漢場春期特別演奏会、
いや、たんに
マイケルのピアノを聴く夕べ。
一体いつから
ドドはここに並んでいたんだ、
何年くらい暮らしていたんだ。
あんなに痩せていたのが
こんなにふっくら太って
ドドと呼んでも答えない。
ここならトニーの
やさしいラッパもいいね。
ドドと
トニーは
初顔合わせになるけれど
きっといいデュエットになる。
ユタはやっぱり
弾かないのだろうな。
(春は幻想も咲きやすい)
ディックのリハーサルは
ここのみんなも
うつらうつらと楽しむだろう。
泉井小太郎 春とピアノ―[TOP][表紙][目
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