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トニー
トニフラを聴く。
トミフラではない。
孤児院でやけに
ラッパの
上手かった、
ソニクラではなく
ソニクリでもなく
トニフラ。
ちょっとややこしいが、
ケニクラ
ソニロリ
いろんなひとがいるものだな。
このひとも
(トニクラと打ったり
トニヌラとミスしたり
混乱しているな)
泣きたい時に聴くとじつにいい。
べつに泣いてもいいんだけれど、
泣かずにぐっと
堪えて
一から出直そう
ひたひたとやり直そう、
そういうトランペットを吹く。
草木の芽吹く
三月にふさわしいのは
その詩情ゆえか、
中音域のまろやかな音色は
人間の内なる
<ものの芽>も
慈しんでくれるだろう。
トニー・フラッセラ
春の響きを残して
本人は
早々と朽ち果てていった。
ドドや
トニフラ
ソニクラ
(ミスではない)
人間はなぜ
かくも滅びやすいのだろう?
壊滅した土地に
春の芽吹きはあるだろうか?
壊滅した個人に
春の芽吹きはあるだろうか?
泉井小太郎 春とピアノ―[TOP][表紙][目次][前頁][次頁]