小詩集
故園蕪村に遊ぶ
蕪村は懐しい故園です。天地のはるけさ、時空のせつなさ。
巨きな陰翳から、微かな光芒まで、ものの愛に貫かれた郷土です。
この豊かな蕪の村。わたしがとっぷり滞在していたのは15年ほど前。
詩は遠く霞み、絵はまだ霧の彼方、苦しく危うい時期でしたが、
この翁がえいやっとばかりに、光の田野に投げ出してくれたのでした。
陰に佇つな、光に佇て、ものを愛せ、と事あるごとに。
村を出てから星の海、鳥の森、花の野…と巡って来ましたが、
ここらでふっと故園蕪村に立ち寄ってみたくなりました。
お世話になった翁や風景に、もう一ぺん甘えてみようというわけです。
はたしてどのような帰郷になるか、楽しみであっても怖くはありません。
春艸路三叉中に捷徑あり我を迎ふ −蕪村「春風馬堤曲」
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