故園蕪村に遊ぶ -1
山彦
誰かがわたしを吐いた
遠い山のてっぺんで
鬼か
天狗か
山姥か
だからわたしは風に乗り
木々を渡って
谷を駆け
兎の耳を驚かせ
麓の牛を寒がらせ
けれどわたしも惑いつつ
南はどこか
東は北は
わたしは誰か
いつまでゆくか
わたしはわたしをこだまして
春の夕べを
世紀の暮を
あちこち
をちこちするばかり
「山彦の南はいづち春の暮」
蕪村
(c) kotaro izui
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