草露
茅舎 露の句抄
露散るや提灯の字のこんばんは
白露に阿吽の旭さしにけり
白露に金銀の蝿とびにけり
ひろびろと露曼陀羅の芭蕉かな
桔梗の露きびきびとありにけり
白露に鏡のごとき御空かな
金剛の露ひとつぶや石の上
一聯の露りんりんと糸芒
露の玉蟻たぢたぢとなりにけり
−川端茅舎句集
芋の葉の滂沱と露の面かな
尾をひいて芋の露飛ぶ虚空かな
月光の露打のべし芭蕉かな
日のひかり露の微に入り細に入り
−華厳
金環のほそくて月のつゆけくて
露涼し太陽の面まだ平ら
月見草旦の露のみどりなる
大露の露の響ける中に立つ
青蛙両手を露にそろへおく
白露やうしろむきなる月見草
−白痴
叢の露の大石息づきぬ
−定本川端茅舎句集
−現代俳句の世界3「川端茅舎集」朝日文庫