北条石仏ノート


(2011年)


 羅漢合掌 3月18日





羅漢寺へ。
東の数人だけが、まだ頭に雪を残していた。
メジロの声が零れる。
境内には誰もいない。
久し振りにカメラに撮らせて貰っているうちに、
知らず合掌の手にレンズを向けている。





羅漢それぞれの合掌があり、それぞれの祈りがある。





地震・津波から一週間。
懸命な被災地の復旧と、依然消息不明の人々。
ここの境内にも、
「三界万霊平等利益飢渇飽満」と刻んだ塔がある。
羅漢の建立とは別だが、
大飢饉か何かの災害の慰霊塔と思われる。
羅漢たちもまた、何事かの犠牲者を鎮魂するものかもしれず、
数百年を風化に耐えた合掌は、
余寒余震にある被災地のために。





羅漢の合掌を巡り終えて、出口に向かったところで、
ツィー、とシロハラに呼び止められた。
――もう帰るのか?
ラフ・スケッチでもするつもりでいたのを忘れていた。





 羅漢合掌アルバム 3月20日


ジョン・リー・フッカーの「チュペロ」が流れてきた。
iTunesのシャッフル。
洪水に見舞われたミシシッピー州の町、ギターの弾き語り。
ベッシー・スミスにも「バックウォーター・ブルース」があって、
家を無くして行き場の無い女の悲痛が歌われる。





(羅漢合掌アルバムを作成しました)by Picasaウェブ・アルバム

  *

 追記:Picasaでの公開終了 (〜2012.10.16)
   「羅漢合掌」PDF版  (2012.4.20)
   「羅漢合掌」HTML版 (2012.10.16)
   「羅漢合掌」EPUB版(2013.5.11)


 蝶と羅漢 3月31日





カワラヒワが2羽、1羽は仏の頭に。

羅漢の足元にたんぽぽ2輪。
綿を飛ばして少しは増えてくれないものか。

苔の緑は、いつもと違う羅漢が目に付いた。

「さあて、いるかしら」と似た人を探す、若い長身カップル。
「迷路だ、迷路ごっこしょう」と走り回るこども二人。

ルリシジミが、つの (?) のある羅漢の肩で交尾中。


 クリスマス・スイング 12月25日


風と光の寒い午後。
さすがに鳥たちの姿はない。
ワビスケは咲き終わりの頃、
マユミの果実も名残にぶら下がっている。





上の羅漢は、
角隠しを被った花嫁とも言われ、
キリシタン石仏研究家にはゼウスとされる。

光が射し、翳り、
風が来て境内のカシの葉がざわざわと鳴り、
また光が射し。





羅漢の耳。
iPhoneからは、
ジャンゴ・ラインハルトの「クリスマス・スイング」。



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