北条石仏ノート


10(2013年)


 梅一輪、羅漢一人 2月23日





ロウバイを見に羅漢寺に行く。
花はやや草臥れていたが、まだ蕾はあった。
青軸の蕾はまだまだ玉霰。

光に釣られて出たはずなのに、
どんより曇って、羅漢たちももの静か。
なかで一人、頭にサザンカの花びら載せて、
どろん、のポーズ。
羅漢は何に化けたいか。





 羅漢合掌 iBooks版 3月11日





iBooks Authorで製作した「羅漢合掌」(iBooks版)を詩画倶楽部で公開。
(これまでhtml版とpdf版だったが、iPadでの動作を確認)
東日本大震災直後に撮影、一年経って電子本にまとめ、さらに一年経った。

今年の2月15日にはロシアのチェリャビンスクで隕石落下、
冬の雪嵐では、北日本が痛めつけられている。
自然の脅威がある限り、人間の両掌は祈りと願いに合わされるのだろう。


 春と石仏 4月8日


詩集と写真集を一冊に編んだ「春と石仏」をKDPに提出。
T-Time版が2011年4月8日発行なので、
Kindle版は2013年4月8日に合わせた。
これまでの本は大概数時間でAmazon店頭に並んでいたが、
今度のは編集がガイドラインの想定外なのかまだレビューが済まない。

まあそれはそれとして、石仏たちに挨拶でもと羅漢寺へ。
嵐も祭も去って、静かにくつろいだうららなひととき。
みんなこれまでにないほど柔和な表情と佇まいを見せている。
ここの寺は花祭は旧暦で行うとあって、境内に人影はなし。
代わりにエナガ、コゲラなどがさかんに往き来する。





帰りは野辺へ道草。
スミレが大群生と聞いていたが、盛りはとっくに過ぎたよう。
ヒバリが高らか。
ちょっと聞きなしにかかると、
ツギツギツクロウ、ツギツクロウ……と聞こえて来た。
はい、がんばりますとエールに答えて、自転車のペダルを踏み込む。


 大榎 4月19日





小学校のエノキは黄色い花を着けていた。
けぶるようにとはいかないが、やさしい色である。
この日は浮雲もうんと春らしい。
青い空と、白い雲と、エノキの樹影。
その上に淡い半月が浮かんでいた。





羅漢寺では、
羅漢懐こいスズメが、一人一人の頭を乗り移っていた。





 ならの実賢治祭 9月21日


羅漢寺で遠来の友人親子と待ち合わせ。この日は宮沢賢治没後80年。デクノボーを意識して作ったふうらを連れて行った。





羅漢寺手前の小学校では「ならの実大運動会」。イーハトーヴの童話にでも出てきそうな名称で楽しい。らかんたちがいつもより小さく見えたのは、童心に帰っていたのだろうか。

この運動会を毎年見守ってきた樹齢140年のエノキの寿命がとうとう尽きたらしい。春にわずかな新芽を着けていたが、それも枯れ果てた。高学年の120メートル走のゴールは、エノキのちょうど手前。エナガの群れが翔けてきて、遊んでいた。
                 ――Twitterより





羅漢寺ではモズがしきりに高鳴き。
蝶が一頭、地面を歩くように、這うようにしていた。
ツマグロヒョウモンの雌で、翅が破れている様子。
舞おうとすると、ぐるぐる旋回するばかり。





あるらかんの背で普段見馴れない雑草が伸びていた。
アキノタムラソウに似ているけれど、何だろう?





 秋の影を抱く 10月30日


小学校の榎の具合を見に行った。
雲一片ない空に、葉一枚ない木。
紅葉の季節まで保たなかったようである。
校庭に落ちた樹影をカメラに収めた。





羅漢寺に足を延ばす。
閑寂な境内にモズの高鳴き。
メジロやコゲラの声がしたが、姿は見ない。
珍しいカエルの鳴き声も響いて、
でもみんなモズの鳴き真似じゃなかろうな。
羅漢たちの耳はどんなふうに聞いたか。
ドングリが一つ落ちた。





羅漢場の奥の塀に木の影が映って、
「花」というふうにも読めた。

今日は野尻抱影の命日。
影に縁がある日になった。
夜は久し振りに星を観に出た。

  オ リ オ ン の 扉 を 開 く 抱 影 忌



9 (2012b)  11 (2014)




北条石仏