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ユタ1
竹輪と
蓮根と
ピアノの音
それらを炒めていて
――焦がしてしまった。
午前四時頃の
夢の中で、
フライパンと火を
うまく使えなかったのは
たぶん、ドド。
男ばかりいて
年嵩のほうが
世話をやいているふうだった。
ディックと
他にだれかいたとしたら
ぼくか
トニフラ。
トニフラ以外は
みんな料理音痴そうだから
トニフラはいなかったかもしれない。
竹輪も蓮根も
そうたくさんはいらない。
ピアノの音も
ほどよい数だったと思う。
ピアノの音は
ドドと
ディックの
どちらが用意したのか
二人でこしらえたのか、
ぴったりの
音の玉を見つけては
竹輪や蓮根の穴に詰めて遊んだり、
そんなことは上手だったのに。
こんなことなら
ユタを誘えばよかったな。
どこか
野外で
暖かい夜だった。
竹と
蓮と
ピアノなら
風景としては悪くないのだけれど。
味の方は
分からなかったから
ぼくはいなかったと思う。
泉井小太郎 春とピアノ―[TOP][表紙][目次][前頁][次頁]