ふうら散歩


(2012年)


 万両、万両 3月21日





久し振りの遠出。
ふうらを連れてくれば良かったな、と
バッグを探ると隠れていらっしゃった一人、
マンリョウの下で春をいっぱい呼吸していただいた。
「千両、千両」と喜ぶ井月に倣って、
「万両、万両」とおっしゃった。


 イカルの「いいとこ音頭」とふうらの「播磨の四月」 4月1日


午後から相棒と自然散歩、城山の麓の林道を歩く。
段々畑ならぬ段々池が四つ、
川崎ナンバー、大阪ナンバーの車が止まって魚釣り。
播磨の野池群は釣り人に人気があるらしい。
対岸の一際高い梢でアオサギが巣作り。
もう抱卵に入っている♀もいるようだ。

林道の奥から麗しい声で誘いを受ける。
今年初めて聴くイカルの囀り。
イイトコネー、イイトコネーと名調子にうっとり。
ギル・スコットみたいなヘロン声ではなく、
ザ・ピーナッツのような美声の《いいとこ音頭》。
誘われてついつい山径深く分け入った。
猪用の大きな檻を見かけたが、
狐にも狸にも化かされず、鹿の足跡を発見しただけ。
帰りに寄った別の池にはイカルチドリが十数羽。





畑、道端にはホトケノザ、タネツケバナ、ヒメオドリコソウ。
ほっそりしたカンサイタンポポ。
スミレはかつてこんなに見たことがないほど道々に咲いていた。
林道の一処、落葉の上に鮮やかなツバキ数輪。
見上げるとぽつぽつと赤い色が点在。
この土地は昔からツバキが多く、
それを偲んで羅漢寺にも資生堂が寄付したという。
石川県津幡のきびねの大ツバキ、
つげ義春の「赤い花」などを思い出しながら帰り道。

写真は、春の夕べ、草笛を吹くふうら。
曲は《April in Harima》?
ぐるり聴衆は、若い土筆坊と姫踊子。
聴いてくれてありがとう。


 山頭火と四つ葉 5月20日





クローバーの杖は、ふうらの旅の友。
これまで多くのふうらが愛好してきたが、
四つ葉の杖を手にした者は一人もいない。
この夏、誰かそれを手にするのだろうか。

四つ葉をたくさん見つけた日は、4月28日。
愛好家たちの間で定めた四つ葉記念日であったらしい。

78年前の5月19日には、山口県の小郡の野辺で、
  こ の 児 ひ と り こ ゝ で ク ロ ー バ ー を 摘 ん で ゐ る
  摘 め ば 四 ツ 葉 ぢ や な か つ た で す か お 嬢 さ ん
通りかかったのは山頭火。「途上即事」として詠んでいる。

こんな日付の響き合いも面白い。


 (金環)日食 5月21日


曇の予報が外れて晴。雲少し。
6:35 右上から一口欠けた姿を見る。
近くに観測場所を予定していたが、自宅横の空き地に変更。
小鳥の植えたピラカンサが一本あって、
その木漏れ日でも十分観察出来ることが判明。
おかげでコーヒーを飲んだり、
スクリーン用紙を変更したり、
ゲスト(?)をいろいろ呼んだりして楽しめた。





7:17:43 日食一時間進行。
ボードに映るピラカンサの木漏れ日。
進行具合はこれで測り、
時々日食グラスでオレンジ色の太陽を拝む。





7:29:34 最大食(0.932)20秒前。
二人でなにやら賑わっているので、
空き地の一画で花を育てている近所の人が見にいらした。
ボードに映った木漏れ日のピンホール原理を説明し、
日食グラスをお貸しして見ていただく。
あたりがやや暗くなって、温度も少し下がったよう。





7:48:29 ピークを過ぎて三日月形。
ボードの色を、白、灰、黒と変えて微妙な印象の違いを味わう。
先ほどの人が逆になった三日月形を見せてといらっしゃる。
ラジオでもずっーと日食の話題であるらしい。
観測仲間にはふうらも四人。
他に、与謝蕪村、セロニアス・モンク、ビリー・ホリデイのゲスト。

終了(8:53:50)まで待てずに引き揚げたが、
日食グラス以上に木漏れ日が楽しめた。
帽子を着忘れたこともあって、二時間弱、食の進行中とは言え、
やはり太陽光線は強いもので、さすがに疲れが出た。



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ふうら逍遥