10月4日 |
久し振りに羅漢寺。「草画帖」の最新号を届けて、境内の石仏たちに会いにいく。 曇りの閑かな午後だったが、ひと時光も射した。他に拝観者はいない。 石仏たちはみな秋の寂びた表情で寛いでいる。 緑鼻のらかん。苔や地衣類はかれらの表情を変えてしまう。 もとの顔がどんなだったか判らないひともいて、摩訶不思議な空気で立っている。 石にも風化はある。新たな剥落を三体見つけた。 珍しい笑顔のこのひとも左頬が削げ落ちている。 柔らかい石質のかれらもまた雨風に破れやすい。 みなひとしく風羅坊なのだ。雨羅坊なのだ。 かれらはなにもので、なぜここにいるのだろう ?すべてが謎で、すべてが失われた。 その上、かれらの表情も風貌も少しずつ移ろい、原初のものが失われていく。 |