熟柿の如き





 11月29日


小春日和に誘われて羅漢寺へ。
草画帖の新号と、バックナンバーの補充分を納める。
境内は紅葉が見頃で、山茶花の紅白も盛り。





いつもより早い時刻に来たので、東側のらかんたちに日が射している。
いつもではないらかんに、見馴れない日の当たり方がしてとても新鮮。





前に並ぶらかんの影。北風なら有難いだろうが、日光は……。





日 あ た り や 熟 柿 の 如 き 心 地 あ り  漱石

小春の柔らかい陽射しに佇むらかんたち。みんな熟柿のような心地だったろうか。見ている方も確かに甘くとろりとした感慨を抱く。





らかんの手。
なかなかこういう手が描けない。らかんの目、らかんの口。どれも驚くほど簡素なのに、あのような線が引けない。
光は植物を耀かせるが、石もまた光りに輝く。この手も、この日は暖かく柔らかく熟している。





らかんを巡っていると雪虫にも出会う。硬い石と、柔らかい虫。飛ぶものと、佇むもの。一週間の寿命と、数百年の風雪。

石仏と雪虫のしずかな邂逅には深く感じ入るものがあった。



雪虫が舞った  Cosmic




北条石仏