6月10日 |
羅漢寺を本籍地にしたかった。 友人は富士山の頂上にしている。 してもいいんですよね、 と役所の女性に問うと、 彼女は戸惑って奇人を見るような眼をした。 生家は子供の頃に親共々追い出された。 故郷に思い入れのある場所、 気を許せる空間といったら、 らかんたちの並ぶあの境内しかない。 その羅漢場も、 昔の哀しみが哀しみとして生息する雰囲気にない。 石の心身にも、 さびしさやうれしさは日射しのように降ってくる。 嘘だと思うなら、 一人一人の顔を見てごらん。 顔のないらかんの顔をじっと見てごらん。 |