詩集 北国のタンゴ
月の暈
そうだったな
よく晴れて
蝶が
蝶の道を辿っていて
しらと
月も中天に透けていた
・・・・・・
男と女は
部屋にいて
豆腐一丁
皿に乗っていた
ぼぉたぁん
ころころと
笑いを零して
女はギターを爪弾く
しゃくやくぅ
やましゃくやくぅ
花の名を
詠み上げては
ジャカジャカと
ギターをかき鳴らし
おぉれん
みやまおぉれん
キンポウゲ科という歌だそうだ
ころころと
女の零す笑いを
盃に注ぎ
男は豆腐を食べている
○
夜が更けたら
豆電球
男女一組
ベッドに乗っていて
今夜は「6番」
烏丸線
まるたまち
でみず
いまでがわ
男は静かに
停留所の名を継いでいく
右がどうししゃ
左が「わびすけ」
コトコトと
夜毎に路線を変えて
女は
遠い街の
市電に乗って眠りゆく
ぎおん
ちおんいんまえ
ひがしやまさんじょう
・・・・・・
そうだったな
ぽかりと浮かんだ
雲の日々
月は
月の道を辿っていて
大きな暈も持っていた
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