詩集 北国のタンゴ


 大雪日誌・四

       …小禽レストラン開店



大雪で姿を消したが
餌を出すと
雀から集まってきた
柿と
パン屑と
殻付き粟玉

半分に切った柿は
最初の一口から
きれいに
時計回りにつついていく

ところで雀(きみ)たち
正月の注連飾りのはしごは
うちが最後だったようだが
お年玉は余所で貰って
非常食に回したのかな

 ○

台所の窓枠にも
粟を撒いておいたらしい
一羽来て
二羽来て
彼らの情報網(ネト)は素晴らしい
あっという間に
十数羽が一列に並んだ

粟は殻付きだから
一回一回頭を上げて
嘴で転がしては弾き飛ばす
曇りガラスに
ぴょこぴょこ
その影だけが映って
こちらでは
シナモンやクローブや
ナツメグなどの小瓶が
黙って並んでいる

(c) kotaro izui 2001

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