詩集 北国のタンゴ


 雲が落ちた



風が吹いて
雲が落ちた

うす汚れた白雲である
ふかふかの綿雲である

五つのうちの
三つが落ちた

あとに残って
浮かぶのは幾つ?

そういう話ではなくて

妻のアトリエの
妻の空が毀れた!

妻がこしらえて
妻が可愛がっていた雲

妻は留守で
私が空を借りている

そこで
雲を拾って
空に戻すのであるが

雲を洗っておこうか
配置をどうしょうか

それを悩んでいる――

(c) kotaro izui 2001

北国のタンゴ 詩TOP 貘祭書屋