満月祭

(1993.9.16〜9.30)


「まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて
 無方の空にちらばらう」    −宮沢賢治



新月から始まる、
そのひとの祭り。
そのひとは、
いま微塵。
光速の、
祈り、
願い。
哀しさと、
淋しさに満ちて、
銀河を流浪する。

「なつかしき地球はいづこ
いまははやふせど仰げどありかもわかず」

(ああ、たぶん、
ぞんぶんに闇を縫って、
ぞんぶんに光と散って。
あれから60年、
ゾスマ、アルキバ、ディアディム、
ラスアルハゲや、サビクまで。
三角座のエルムトカレート、
鯨座のデネブ・カイトスにも到着し、)

そこ、
ここ、
かしこに。
微塵の、
光の、
修羅の、
<そのひと>。
<その星々>。



友人の陶芸家・吉野幸雄さんが、1993年に「イーハ陶房」を起こし、
その秋に第一回の<賢治祭−星めぐりの歌>を開催しました。
賢治没後60周年、命日をはさんで9月の16日から30日まで。
ちょうど新月に始まって、満月に終わるイベントでした。
21日には、流星楽団が星を巡る曲をいろいろ演奏しましたが、
この詩は「星めぐりの歌」の中で詠んだものです。
賢治さんはいま、輝く宇宙の微塵となって四方八方へ光の速さで飛び散っている、
そんなイメージがありました。詩の中に出てくるゾスマやサビクなどは、
おおむね地球から60光年の距離にあるとされている星々です。
ああいまごろは、これらの星の近くだな、
これからいよいよ北斗の星々に近づいて、
賢治さんの好きな青い林檎の樹に会うのだな、
・・・そんなことをかってに空想しているのです。
ただし星の距離は正確なものではありませんので、実際のところはわかりません。

流星楽団は、トランペットとギターとヴォーカルのトリオ、
たまにゲストが入る風変わりな楽団(?)です。
イーハ陶房は、1998年4月1日にホームページ「でくのねっと」を開きました。


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