アンドロメダ
ANDROMEDA SKETCH

作句のつれづれに、ときたま賢治に関連して詠むことがあります。
ここではそんな句をすこし集めてみます。新作にも励むつもりです。



 アンドロメダは、Andromeda銀河のことです。
 私たちの銀河のよき隣人、230万光年隣りの渦巻き銀河です。賢治も愛したこの銀河を眺めていると、自然に「秋と修羅」という言葉が浮かびます。
 賢治の心象スケッチの断片は、輝く銀河の星々のように明滅し、アンドロメダ銀河の渦巻きと光芒は、遥かな心象のようにけむります。

 心象も渦巻く銀河修羅の秋

 心象の北に向へば春と修羅

 上野駅での感慨です。
 ホームで心象は北に、花巻や盛岡の方向に傾いてしまいました。春浅い2月、人混みの中でなにやらたった一人の余寒に襲われて、賢治さんを慕ったのです。まぶたの裏のレールは、ひとすじに東北本線を花巻に伸びていましたが、私が体を沈めたのは信越本線を北に向かう「白山3号」、しばらく体と心が遊離した状態でした。

 岩手県地図に見入れば秋の雨

 昭文社の分県地図・岩手県を購入し、夜々賢治作品を繙いてはイーハトーヴを逍遥。うらの白地図にいろいろ書き込みをしながらの夜長でした。そしてなぜか雨にたたられました。といっても机上の旅で影響はないはずなのですが、妙にそのときの雨音が耳に残っています。

 かぷかぷと通草も柘榴も笑ふかな

 通草、柘榴、毬栗で秋の三笑です。いずれもその実が弾けて割れます。それを笑うと見立てたのはかなり古い時代のことです。
 かぷかぷと笑うクランボンの正体も、かぷかぷと笑う笑いの正体も定かではありませんが、賢治祭が近づくと、ものみなの笑いはかぷかぷとなるような気さえします。
 この句は9月21日、忌日に詠んだものですが、あけびやざくろも賢治の忌を修してイーハトーヴ風に笑い、星々もまた夜空でかぷかぷと瞬く−―そんな幻想です。


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