蕪村の春





 3月20日


ようやく春の陽気。暖かくなると呼吸も幾分楽になる。ただ春は黄砂や花粉にPM2.5と、肺に良くないものばかりが降る。それらの予報の薄い日を見計らって散歩に出る。
野辺には小草もぽつぽつ咲き出しているだろうから、だれかふうらと一緒に。ヒメオドリコソウを見かけるようになって、ホトケノザはとっくに踊りのシーズン入り。では一遍さんを、いやナズナ、タンポポなら蕪村さんも楽しむだろう。さて、どなたを……。





このところ新しく入手した画集や俳書などでつきあいの濃かった蕪村翁と野に出た。
花木の少ない農道はまだ寂々としている、それでも道端にノジスミレの紫を見る。カンサイタンポポの咲きはじめのほっそりした黄色もいい。

与謝蕪村は〈春の詩人〉と称えられて名句が数多ある。闌春から晩春にかけてが真骨頂。こんな時期は梅見だろうが、道筋の畑の梅はもう花の終わり、そのあたりに咲く一叢のキズイセンに立ち寄った。天保年間に渡来というから翁は知らないだろう。





まだ早いと思っていたレンゲソウがひとところだけ咲いていた。クローバーも花を着け、コオニタビラコの黄色が地面に張り付いている。

二月の寒さで春は足踏みを食らったようで、花も鳥も遅かった。この日初めて空にヒバリを聴いた。マチュピチュがどうしたこうした、スピリチュアルがどうのこうのと歌っていた。
  ひ へ 鳥 を 廿 チ か さ ね て 雲 雀 哉
という句が蕪村にある。伊勢物語の「比叡の山を二十ばかり重ね上げたらんほど」という詞を踏まえて、ヒヨドリの飛ぶ高さの二十倍の空の高みでヒバリが囀っている……という趣旨らしい。
今日初演のヒバリはまだそんなに高くは行かないが、春が闌けると太陽目がけて翔け上がり、「芸術、芸術、芸術」と叫ぶのがいる。





風がおいしい  芭蕉の春




ふうら逍遥