9月7日 |
風の羅漢、旅する羅漢を、墨や陶で表現してきた。 野の旅人だからと、最初は野焼きから。塊に近い作りのものを、コントロールの効かない焼き方をするのは無謀だ、と言われながら試行錯誤。そのうち、友人の窯に入れて貰ったり、野焼きの仲間が暮らす村に薪窯が出来たりして、いろいろな焼き方で、いろいろな<ふうら>が生まれてくるようになった。 ひとりひとりのふうらには、名前がない。焼き上がりの妙味とかは出ても、作品として銘を付けることもしなかった。ただ、ふうらが生まれてくる、ヒビが入っても、どこか欠けても、それでそのまま自然のふうら。それが楽しく、長くたくさん作ることになったのだと思う。 そんな中で、ただ一人、愛称を持ったふうらがいる。 白いふっくらした体格、やさしそうな風貌に、幻想好きの友人が 「月のひと」 と呟いた。野焼き仲間で、幻想動物や人形オブジェなどを製作する舞踏家。彼の一言で、このふうらは月のひととなり、ゆったりした白衣は月の光の色合いに感じられるようになった。 さて、明晩は十五夜。 待宵の心持ちで「月のひと」を取り出し、夕刻表に出てみると白く丸い月がぽっかり。せっかくなので記念撮影。塀に登って貰って、なんとか構図を確保したが、望遠で月を引き寄せるなどの芸当は出来ない。 パシャリ、とやってくれたのはiPhone4S。 出来栄えは問わず、月と月のひととの初めて(!)のセッションを珍重しよう。 |