石の羅(うすもの)たち





 9月15日


北条石仏のページも出来たし、明日からの雨の前に羅漢たちに会いに行った。このところ歩くとすぐに息が切れるのに羅漢たちを回っている間は呼吸も自然。秋日がやわらかく、風もさわやかに吹いた。





境内に白と赤の曼珠沙華。野牡丹、萩など。羅漢場にもいろいろの茸。





道々耳にしたツクツクボウシの歌もここでは鳴かず、この午後は鳥の姿もなく、訪れる人影もない。木の実もまだ落ちるには早く、静かな羅漢場。





一文字に目を瞑って、何を大事そうに抱えているのだろう。隣の羅漢は胴体がついに見つからなかったのか。 明治四年か五年に近隣で起きた一揆が飛び火して、二百人ばかりが五百羅漢に集合、羅漢の首を刎ねるなどの狼藉を働いたとの伝聞がある。廃仏毀釈の流れにも乗った事件であったろう。





過去もまた鮮烈で眩しい。この羅漢も首にセメントの修復がある。頭部が欠けたままの石柱風のものも多く、不釣合に繋がれた羅漢もいる。





こんな薄いぺらぺらで何百年も立ってきたのだ。地震に何度も揺れただろうし、暴風に巻かれもしただろう。倒れていた時期が長かった羅漢もいるかもしれない。みんな羅(うすもの)だ。ピアニッシモの旋律だ。それでも、われらの、かれらの歌があり、物語がある。



花と羅漢  雪虫が舞った




北条石仏