ピアニスト―百合筆


ピアニスト―百合筆



吹きわたる風はとどまらず
黒いたそがれの町外れに
ガスはほとつき出す
かわいた郊外の芝原に霧はながれはじめ
とある一軒家の二階からは
ぼろんぼろんとピアノの音色がをどりだす
路にしみる日暮がたの寒むさよ
身にしみるピアノの音色よ
私はそろそろ黒い林の多い
冬の旅仕度を思ひ始めた


  ―福士幸次郎「冬の日暮」




草人艸墨展入口ピアノを弾くひと