ピアニスト―オリザ筆


ピアニスト―オリザ筆



塀のかなたに嘉莵治かも、      ピアノぽろろと弾きたれば、

一、あかきひのきのさなかより、   春のはむしらをどりいづ。
二、あかつちいけにかゞまりて、   烏にごりの水のめり。


あはれつたなきソプラノは、     ゆふべの雲にうちふるひ、

灰まきびとはひらめきて、      桐のはたけを出できたる。


  ―宮沢賢治[塀のかなたに嘉莵治かも]




草人艸墨展入口ピアノを弾くひと