あるヴァイオリニストの印象 恩地孝四郎(詩) 六角文庫編 |
恩地孝四郎には、ラヴェル、バルトーク、ドビッシーなどの《楽曲によせる抒情》シリーズの版画作品があります。それらもまとめて見たいものですが、ここでは数奇な運命を辿ったヴァイオリニストに寄せた一編の詩と一枚の版画を小冊子にしてみました。 恩地の作品で細面痩身で描かれた《あるヴァイオリニスト》諏訪根自子は、美貌の天才音楽家として知られた伝説の人物です。戦前に16歳でベルギーに留学、大戦中もパリとベルリンを往復して演奏活動を続け、ベルリン陥落でアメリカ軍に拘束されて帰国。戦後もしばらくは活動を続けていたものの、60年頃に隠遁。以後は偶に録音、私的な演奏会がある他は消息も聞かれず、2012年の3月6日に亡くなっていたことが、秋に報道されました。 恩地は諏訪根自子の演奏を占領軍下のステージで聴いています。そのときの印象を綴ったのが、この詩と版画。 《ああ、骨身を削つてゆく弦と弦との擦音》 人体と感情、思想と世相、個人と世界、希望と運命、芸術と生存……いろんな擦過音が胸に届いてきます。 |
(立ち読み:完全版)
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