句集 鯨座 白山鳥翁 |
(あとがきより) タイトルは『鯨座』とした。集中鯨座を詠んだ句が三句。そのどれがというのではなく、そうして折々に心を寄せた鯨座に捧げたものである。 この十年、私はがらんとした鯨座のような領域に、がらんとした鯨座のような心でいた。鯨座はまた、もう一つのタイトル候補であった「空地」によく似ている場所でもあった。三十年近く前に、そんな空地を双眼鏡で眺めて意外な星数に驚き、宇宙とはどんなところか、とふらふら迷い込んだ場所でもあった。 蝶いまだ生まれ尽くさず荘周忌 春禽として若冲の鳥来たる 雨催ひロマのギターと十薬と 短夜やフオント切替へ方丈記 名曲はノイズ混じりで秋の風 ほほほほとあけび紫色に笑ふ 恋情の文字化けしたる霜の夜 |