句集 鯨座

 白山鳥翁



 (あとがきより)
 タイトルは『鯨座』とした。集中鯨座を詠んだ句が三句。そのどれがというのではなく、そうして折々に心を寄せた鯨座に捧げたものである。
 この十年、私はがらんとした鯨座のような領域に、がらんとした鯨座のような心でいた。鯨座はまた、もう一つのタイトル候補であった「空地」によく似ている場所でもあった。三十年近く前に、そんな空地を双眼鏡で眺めて意外な星数に驚き、宇宙とはどんなところか、とふらふら迷い込んだ場所でもあった。

  蝶いまだ生まれ尽くさず荘周忌
  春禽として若冲の鳥来たる
  雨催ひロマのギターと十薬と
  短夜やフオント切替へ方丈記
  名曲はノイズ混じりで秋の風
  ほほほほとあけび紫色に笑ふ
  恋情の文字化けしたる霜の夜


2016年11月30日発行 epub形式 1.1MB 450円



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