詩集 ピアニッシモ

  泉井小太郎


 小詩集『春とピアノ』
  ディック・ツワージク
  ドド・マーマローサ
  ユタ・ヒップ
  三人のピアニストと
  一人のトランペッター
  トニー・フラッセラ
  ジャズ界のピアニッシモな人たちに思いを寄せた詩集。

 小詩集『春と石仏』
  作者も年代も不詳。
  謎と不思議に佇むピアニッシモな群像を
  詩と写真で綴っています。

 2011年3月11日前後に書いていた作品を一冊にまとめました。



オンデマンド印刷による紙本です。



10inch版
192ページ
2018年4月30日発行
2000円 (+税)


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【収録詩篇】


 ディック4


夜明け前に
ディック・ツワージクのピアノを聴く、
それが習慣になった。
夜明け前に起きればだが。
調律の狂っているのは
かれの弾くピアノだけではない。
ぼくの住む世界も
どんどんものごとが外れている。

それにしても
この世に残した
たった七曲の
ピアノ・トリオ、
それからソロで
ひと続き四十分ほどのリハーサル。

(コンプリートと銘打ってあるのが悲しい)

夜明け前には
草木も
鳥も目覚めて
魂もウォーミング・アップする。
首尾よくいけば(Nice Work If You Can Get It)
——と、ディックは演奏する。
夜明けに
幸運を手(Get Happy)にして、
ちょっとした奇蹟でも起きればいいナ。(It Could Happen To You)



 春と石仏 6


謎が立っていて
男なのか
女なのか
不明が立っていて
大人なのか
子供なのか
不思議が立っていて
何を持っているのか
答の無いまま
四百年か
六百年か
不詳が立っている







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