詩集 幼虫時代

 天は眠る



一枚のまひるを広げて、
天はねむる。
天に棲むものはまどろむ。

大きな円のまんなかで、
あなたも中心をもてあまし、
空の茶碗と、
空の日記と。

ああ、ほら
貘の居眠り、
貘のあくび。

いつになったら、
わたしはわたしを外れて、
あなたと見分けもつかなくなれるだろう。
だれかとみまごうわたしになれるだろう。

白昼はひもじい。
なにが悲しくて、
なにが可笑しくて、
くるるっ、と
ひとり鷭(バン)のような声を立てる?



(c) kotaro izui 1998