詩集 幼虫時代

 孤島



孤島はいつも帰ってくる。
雨降る、真夜中、
腹を空かせて、
愚痴をこぼして。

どこをどう、
ほっつき回っていたのか?
(放浪とか、
 漂流とか、
 回遊とかいう言葉が、
 カレの好みなんだが)
海垢によごれ、
大気によごれ、
鱶や、
潮にこづかれて、
またひとまわり小さくなったか。


「まあ、乗れ。」
と孤島は言う。


淋しい草地と、
わずかな潅木。
えくぼのような水たまりが一つある。


さあ、
どうしょうか?
孤島に乗れば、
ぼくはこれから、
開くのか、閉ざすのか?


「空ははろばろ、
 海はひろびろ、
 さあ、
 一緒に、
 遠く、
 深く、
 巡ろうではないか。」


孤島と何度出かけたことか。
星降る、真夜中、
腹を空かせて、
鼻歌混じりで。



(c) kotaro izui 1996