雲と獏



  獏

天の川の
西の岸ではないが、
獏が八頭いて
釣鐘を護っている。
月も昴も
オリオンも西に傾く頃、
その鐘を撞くのだ。
撞けば
星空でも応えて
巨きな美しい釣鐘が鳴る。


雲


  雲

元日の空で
雲が
しばらく円相を描いた。
雲のことだから
飽きやすく
壊れやすい。
もっと長く見たければ
夜まで待って
夏まで待って
二六〇〇光年彼方に
遙かに遙かな円相がある。


獅子


  獏

二日の
日陰の路に
水溜まりが二つ。
氷が融け残って
右は獅子の
左は獏の形。
謎の羅漢に
会いに行くのだが、
境内にやっぱり
そんな獅子や象がいるよ。
氷は融けても
謎は解けないけれど。


獏


 雲

三日の空に
雲は何を訝ったのか、
流れながら
疑問符になった。
何が
?なのか
一緒に考えてみたかったが、
答が出たのか
納得したのか
雲はあっさり形を変えた。

 

(c) kotaro izui 2015


貘祭書屋詩画