ミス・アン
詩「ミス・アン」泉井小太郎 1977 / 皿 吉野幸雄(イーハ陶房) 1987
ミス・アン
6月29日、水曜日。
鳥の街道を雨が通る。火が通る。
私の窓からの草ぼうぼうに、ミズヨロの卵が
ころがっている。
ミス・アンのことを考える。
ミス・アンのことを考えながら、原稿用紙を
折って、いつの間にか紙コップを作っていた。
悪い癖だ。
エビアン水
エビアン水!
雨でも受けよう。
草の露でも集めて回ろう。
※
妻はセルロイドのサキソフォンを咥えたまま
トイレに入る。
ミス・アンのやり方だそうだ。
ミス・アンのやり方で今日一日を暮らすのだ
そうだ。
貘祭書屋/詩画