天使が笑った






女




真白い顔に
真赤な口紅
細い目が笑って
あんな具象の
あんな抽象の
絵に描いたような女

旅の日の
幻と
かなたのうつつ






フライパンに卵を落とせば
じゅっと産声あげて
目玉銀河が誕生する
こつは半熟なのだ
なにごとも未開なのだ
林檎も
薔薇も
音楽も








けれど
かき混ぜてしまった
焼き上げてしまった

色なら三色で済む
白い顔
赤い口
それに黒い衣装








料理は不得手でいい
人生も不器用でいい
絵に描いたような可憐さで
(だれの絵だ?)
(むろん女の?)
赤い口元がゆるんで
かなたへの戸口に立って
こなたをふり返ってから
微笑んだ
手を振った









  詩:泉井小太郎 2018.10.06
  絵:泉井小太郎 2018.12.22
  絵:音座マリカ 2018.12.24
 


貘祭書屋詩画