詩集 雨羅

 雨羅



  ―草に、雨ボーボーの・・・


野が唸る
南無野や
小目野のあたり
風が
ジャズが起こり
草が
びるびると鳴る

草がびるびると鳴って、蹠に草のrがむずがゆい。(ああ)もう職探しなど止しにして、この用水でも追って行きたい。水の愚・一篇、♭する足取りで・・・・・

 ※

草の冠に、雨の冠。そして三水に偏して、生きてきたように思う。水の愚一篇、追い綴っていったおかげで、齢三十にして、職なく糧米なし。
<帰るところにあるまじき>犀星のふるさとを異土として、よしや、よしや・・・の乞食もどきの、雨羅、風羅。

今日から、入梅。
<五月雨に家振り捨ててなめくじ>ってきた千日がある。
万日が、ある。
・・・・・
雨ボウボウ
草ボウボウ
・・・・・

 ※

草は、
むぐら、
えのころ、
ぺんぺん。
野に、
ざわざわの、ロール。
スイング、猥々。

草は、また座禅草。
その花のなりが達磨の座禅の態に似る。
異臭、ぷんぷん。
<座禅して草煩悩の臭いかな>

草は、また
世間の、青人草。
野に激しい草いきれである。

野に激しい雨が降る。
ドロドロと、北国の野をレビューするローリング・サンダーがある。
野に、草ざわざわの、ロール。スイング、猥々。
もはや、小目もきかぬ、文目も分かぬ。
けれど、この閨この野は、まだまだ畳まない。

 ※

野が唸る。
草がびるびると走る。
みどりを噛んで
みどりのとらぶるを踏んで
ああ、しかとこの土踏まずを私は信じて
野に、蹠から発っていこう
方々へ
衣を着て
うら
ふうら

戦いでいこう



(c) kotaro izui 1978