詩集 雨羅

 水曜日



六月
濁る水曜日
この川から発って
魚は泪をぬぐい
南に向かう
水の昏みに陥ち
草の春情を分けて
濁り
濁りながら
南へ傾いてゆく
もう 夏
もう 29
いちまいずつ
うろこをぬいで
石にくれてやる
水ばかりが
ぶ厚くなって
岸へ
岸へと
がぶり寄ってくる
水曜日毎の
濁りの淵で
猛り
放心し
大きく南をにらむ
いまは
北も
西も なまける
東もうっちゃって
ひたすら南へ濁る
この川の
どこか むこうの
水無月
いちまいずつ
破れたうろこをぬいで
水のエロ
水のグロに
浮き沈みながら
50の
水の日を尽くして
みんなみへ
魚住へ



(c) kotaro izui 1977