詩集 雨羅

 フォマルハウト



   序章

<目の裏>通りに
水が立ち
水が消える
水の中に
欲望が立ち
欲望が消える
南の魚座の
3月に
美保は眠っている
女陰をひらいて
水甕の
白水を浴びている


   終章

<目の裏>の里に
條布の井あり
アンコウの夜
西の魚の口中で
私は
26歳
美保の胸を想って
震えている



(c) kotaro izui 1976