詩集 北国のタンゴ


 大雪日誌・三



展覧会は
雪に埋もれた
見事なまでに
すっぽりと
絵を描く者も
詩を書く者も
いまはひたすら
雪を掻く

暗い雪洞(かまくら)から
出ていらっしゃい
そう言ってくれる人がいる
何年経っても
積もるのは雪だけ
貧乏暮らしは
南国でするものよ

雪が融けたら
そうしようか
帽子を脱いで
長靴を脱いで
柔らな光を
浴びてみようか
乾いた風に
吹かれてみようか

まさか今度も
電車が一両あるから
住んでみないか
そんなことではなかろうが
あれから十五年
この地で
やるだけやった
雪はもういいだろう
気象だけでも
晴れてもいいだろう

(c) kotaro izui 2001

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