詩集 弦想
月夜の小舟
―1979.6.15
耳に
小舟を
浮かべて
一艘の
「性」の
行方を
漕ぐ。
六月の
雨や列車
ではなく
打歌のひとり
でもなく
花の悲痛
でもない、
もう
四十年も前の
古びた一枚の
寝床を
そっと
河に浮かべるのだ。
※
耳が
内から濡れて
空に
月齢二〇・一
月夜の
小舟の中で
いかにも
男と女
のように
音楽が化けている。
(c) kotaro izui 1979