マリカ #1
1
日溜りを丸めて
どこに蔵い込んだか
この冬
彼女は浮かぬ顔をして
休日は
もっぱら
林檎のシンでふるえている
雪も
ピアノも降らぬ
耳線をのばして
乳の輪をひろげてみても
ボツン、
ボツンと
果実の種様のものが
たまさか
屋根を叩くだけ
2
部屋の中で
蒲団田の
霜踏みをする
眠った男の
薄い氷板を砕ってみる
あしうらに
稲の切株の
ジグ音
ザグ音を
蘇らせて
なんとかひとりで
火照ってみる
3
遠イ話ダ
春モ
ウノ山河モ
紙ヤ、衣ヤ
列島ノ
裏ヲメグッテ
ハクダク
ロクショウ
彼女ノ
オウニノ田ニ
イクツカ
ホクロモ増エタ
4
この街では
くるくる天気が変わる
雲が速くて
黒いドラムが
不意に鳴る
(泣ク子モ
黙ル
鬼ガ
今泣キ
モウハヤ
笑ウ)
不意に彼女は
バドや
バードの声に飢える
とりわけ
激しい雷鳴の中を
笑いながら死んでいった
35歳の男の
ボロボロな笑い声に
飢える