珈琲、もう一杯
山肌を
ひそかに撫でて
谷へ
性腺へと
風が下りてくる
どこかの
島や
だれかの
乳房をめぐって
この夜
内密の話が
吹いてくる、下りてくる
、
またも
木の葉一枚まとって
旅に
掠われていくのか
峠の
向こうで
沼が
うたが
いんのうが
むずかっている
ゆっくりと
パンを食べる暇もない
水と
煙と
それから
・・・なにか
霞はくえるか
ひとはくえるか?
ともかく
足の豆でも焚きつけて
この
むら雲を急ぐ
、
草の笠に
草のペン、いや
ペンはいらない
野に
ふくれあがる欲情だけを
浮浪敷に包んで
馬のように
カラクサ、と走る
いつか
峠に着いたら
茶屋で
珈琲をのみ
爪と
髪を切りそろえて
さらに
もう一杯、珈琲をのむのだ
、
しらじらと
詩も
雪も
夜明けも降ってきたが
柳があるまで
休まない
どこかの
だれかの
鼓動が
たえまのないベースの
ランが
性腺を越えて
山のアナタへと
駆りたてる
アナタの向こうの
谷へ、と駆りたてる
いつもの
悪い癖で
もう
きんぽうげがあっても
知らぬフリをする