詩集 オリオンの扉


 風座



雨上りに、
ロゼットを広げて、
茎を立てる。

タンポポだったか、
アザミだったかは知らない。

 ×

風が吹けば、
いずれ、
綿が飛ぶだろう。

旱が続けば、
いずれ、
立ち枯れるだろう。

 ×

さわさわと、
野末は鳴る。

水も、
みみずも地面の下。

 ×

下手な呼吸使いの誰かがいる。

 ×

丹田に、
日が差し、
日が陰る。

 ×

音楽のような、
舞踏のような、
妙な呼吸がやって来る。

是非は知らず、
しばらく、
リズムに乗ってみる。

 ×

夕べの海の芥となり、
夕べの土のバクテリアとなる。

 ○

蔦の葉裏に、
すっぽり入る。

風が死ぬ−ということもある。

 ×

蟻が見えたままに、
蟻としばらくゆく。

 ×

朝日の小ジャングル。

 ×

巌や、
泰山はどこにもない。

ただ、
小石の如く坐る。

(c) kotaro izui 1995

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