詩集 オリオンの扉


 五月



きらきらとあるために、
どうすればいいのか?
若い宇宙の、
若い銀河の、
危うく滅びかかる惑星で。

牡丹がたわたわと鳴り、
鈴蘭がちりちりと鳴る。

オオルリが飛来し、
キビタキが飛来し、
コマドリが飛来する。

あおい歌、
きいろい歌、
あかい歌。
列島の日々は巡り、
身辺の日々も巡る。

うな垂れた春女苑の蕾が頭をもたげ、
鬼田平子の花茎がぐんぐん伸びる。
翁草もつと天を仰ぎ美しく白髪する。

感動して、さあどうするか?
感動して、さてどうゆくか?

7日、爆発増光する赤い流星を見た。
8日、青白く飛ぶ流星の痕跡を見た。
9日、閃光する真正面の流星を見た。

ケヤキの若葉を、
エノキの若葉は追い、
クルミはぽたぽた緑の花序を打ち落とす。

さあ、粒子のぶつかる精神は、
さあ、エネルギーの祭典だが、
さあ、花が咲くかどうか、
さあ、雛が孵るかどうか、
さあ、星が生まれるかどうか。

荒庭はステラリア属の実の季節。
カタツムリの赤ん坊も這い出した。

柿の幼木、
萩の幼木、
杉の幼木。

獅子座のRはぐんぐん光度を上げ、
白鳥座の χ がひたすら追いかける。

詩や、
俳句や、
絵や、
陶像や、
絵本など。

なぜ、そんなものに精を出す。
なぜ、追われるように。
なぜ、責め立てられるように。

花は花。
鳥は鳥。
星は星。
ならば、
人は人、とはどのようなこと?
人は人、とはどうあればいい?

日々に蝿は生まれ継ぎ、
竹は古葉を打ちはらい、
星は銀河をめぐり合う。

若い宇宙の、
若い銀河の、
若い惑星の(そうあってほしいが)、
若い生命群。
その一環で、
きらきらと瞬くためにどうすればいい?

(c) kotaro izui 1994

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