詩集 星の譜


 曇天録

       ―淋しい宇宙人



そう言えば
虫の音もない
独り
珈琲を啜る音と
煙草をくゆらす音と
こうして
五秒十秒
ぼんやり
一千秒ほどを

南の海上では
台風二十三号
超大型の
心と
眼が
荒れゆく時代にはなくてはならぬか
火山噴火も
戦争も続く

首が凝り
肩が凝り
考え事の手足も痺れ
夜に三度
星を見に庭に出る
雲と
車の流れ
銀杏の溜息

こういう風ではない何かを願っても
こういう風に辿っていくしか開かれぬ

曇天の
夢想
百億光年を超えて
明日の予定と
目下の空腹

さて
銀河系の茶漬けを食べる事から始めてみる

(c) kotaro izui 1991

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