詩集 夜明けの茶柱


 鐘・ミレニアム



大海の孤島に
鐘楼一つ

まあそんなイメージ

楼に登って
梵鐘一つ
潮風に錆びもせず
   朽ちもせず

よくまあ辿り着いたものだと
漂流船一つ
海図もなしに
ただ星を眺めていたばかり

深い吐息の
男一つ
長い溜息の
女一つ

さてさて
時は
二〇〇〇年

戦に荒れて
油に汚れた海よさようならと

願いを籠めて
鐘の音一つ
撞き手が代わって
また一つ

真暗い海はまだ明けず

鐘は音速
星は光速
祈りは何の速さで進むのか

一月一日
午前零時

(c) kotaro izui 2000

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