詩集 夜明けの茶柱


 七月のバラード



 1 レディ・デイに ―1959.7.17

山梔子の香り
甘い
濁りと
奢りと

清浄な夢など
見たのだったか

夜と
髪は
どこまでも黒く
白い花を
飾ってあれ



 2 トレーンに ―1967.7.17

轟々と
梅雨の
鉄路が鳴いている

青の
地平の
魂の

始発であったか
最終であったか
列車は
乗客は
帰ることもなく



 3 茅舎に ―1941.7.17

寂光に
ぱらぱらと
降りたって

凝り
崩れ
渇く

芭蕉葉と
芋の葉と
貝割菜
その他の露の
ひかりかな



 4 S-L9彗星に ―1994.7.17

ついと
出たのだったよ
逆らえなくて
戻れなかったよ

どこへ向かうか
なぜこうなのか
何も知らずに
ゆくしかなくて

行ったよ
行ったら
星があって
ついと
曲がったのだったよ



 5 月に ―2000.7.17

赤く浮かぶ
丸く浮かぶ

ありありと
太陽系の
(惑星系の)風景で
古代でも
現代でも
蝕の驚きはある

月は
円相よりも
やはり
球相がいい

(c) kotaro izui 2000

夜明けの茶柱 詩TOP 貘祭書屋