詩集 夜明けの茶柱


 はじめまして 

      ―山之口貘さんへ


貘さん
はじめまして
小太郎です
小貘とも申します
なんだか
落語家か
芸妓のようで
これでは
男か女かも判りませんね

以前から
詩を拝見しています
貘さんが
貘のように
ぐずぐずと
悪夢を咀嚼するように
一字一字
一枚一枚
お書きになった作品の
虜になりました

生涯で
(大袈裟ですね)
二度
貘に逢いました
最初は
もうよく覚えていませんが
人間の姿をした
やさしい眼の
しずかな眼の
一頭
こんなふうに
夢は味わうんだよと
不遇も
貧困も
じつにおいしそうに
舌の上に載せてあるのでした

二度目は
遠い昔から
遠い国から
はるばる流れて来た
置物の姿の
一頭
やさしいからだに
悲哀も
艱難も
しずかに息づいていました
ニイハオと
ひと言挨拶すると
ちらりと
一瞥してくれて
それがとても嬉しかったのです

なつかしい話です
あの時
この貘と暮らしたい
痛切にそう願いました
こんな邂逅を
見逃がすようでは
たいした生涯を送れない
一文無しの
欲張ることではありませんね
貘は再び
市に売られ
わたしは
いつかどこかで
もう一度会いたいという
大きな夢を
食べさせてもらったのです

貘さん
感謝いたします
なぜか
あなたにお礼が言いたくて
一文無しは
三文文士にすら
なり得ませんでしたが
夢からは外れずに
未来と可能性だけは
そのまま失くさずにいます

長くなりました
このメールは
魔法の原稿用紙で書いています
どんなに清書し直しても
たった一枚で済み
しかも
そのまま編集して
そのまま製本出来るという
とんでもないものです
このことをお話したいのでした
わたしもぐずぐずと
文章を綴ります
何度も何度も行きつ戻りつして
一編の詩に
百枚二百枚の屑
ぱあではないかと
貘さんの同類でした

こう書いていくと
いろいろご託を並べて
なんだか最後に商品宣伝
そんな錯覚に
自分で陥りそうですが(^^;
どうしても
お知らせしたかったのです
このメールは
そのファイル形式で
添付書類にして送ります
読むには
専用のビュワーが必要ですが
無料で提供されていますので
URLを書き添えておきます
お手数ですが
そこからダウンロードして下さい
これはいいと
お気に召せば
一つ手元にお届けします
ご不要でしたら
連絡はいりません

それから
わたしも詩を書いて
密かに
この世で
あなたにリンクを張っています
事後承諾になりますが
どうかご了承ください

貘さん
小貘というのも
このメールで
はじめて使いました
そして
これきりの
ハンドル・ネームです
甘えた行為
お叱りにならないで下さい
今日は晦日
地球は明後日には
もう二十一世紀なんですよ

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(c) kotaro izui 2000

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